『最愛の子ども』

『最愛の子ども』

松浦理英子

文藝春秋

 

 


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私立玉藻学園に通う女子高生たち。

パパの日夏とママの真汐と王子の空穂。

三人はわたしたちのクラスのわたしが見守っている疑似家族〈わたしたちのファミリー〉。

 

いとおしいものを、ただ素直にいとおしく可愛がる。大人になる一歩手前の、あの独特な雰囲気。

性のめざめなのか、憧れなのか。

薄いガラスを腕のなかに抱えている気分で読んだ。

 

どことなくソフィア・コッポラの『ヴァージンスーサイズ』に似た雰囲気があるような。(誰も死なないけれど)

 

豊崎さんもおっしゃっていたけれど、帯にある「少女であることは非力で、孤独で、みじめだ。」は違う気がする。

彼女たちは非力すぎることもないし、孤独ではない。仲間がいる。幸福なコミュニティがそこにはある。もちろんその外に出たら世知辛いものかもしれないけれど。

そして、みじめかと言われると……それも違うような気が。

決して卑屈になりはしない。

根底に自分を、そして友だちを信じているからではないだろうか。

 

松浦さんは津村記久子さんのデビュー作『君は永遠にそいつらより若い』に衝撃を受けたとおっしゃっている。

二作には通じるものがあるとわたしも思う。

(お二人は文學界で対談されている)